季節の話題(その5)

 

● ウルシかぶれのおこるわけ ●

待ちに待った山菜シーズンの到来です。

山菜採りに夢中のあまり、ウルシの存在をつい忘れてしまいがちです。

私のようなウルシに弱い人にとっては、とても厄介なものです。

かぶれの原因を探り、ウルシとのうまい付き合い方を考えてみましょう。

かぶれの原因はアレルギー反応
  
   人の身体の中はすべて一定のきまった成分だけからなる生命体であり、皮膚の
 外は全て体内の生命とは別の物質からなる世界です。生命が生き続けてゆくには、
 自分でない化学物質(ノンセルフという)は全て拒絶してゆかないと、同一の成分を
 維持して生命を保ってゆくことはできません。そこで、免疫といって、自分でない化
 学物質が皮膚の中に入ってくると、身体はそれを敵とみなし、それを体内から攻撃
 する態勢を作り上げるのです。
 
   もともと体内に存在しない物質が侵入してくると、T細胞という白血球がこれを攻
 撃して破壊してしまいます。これらが侵入してきた皮膚で攻撃や破壊がおこるわけ
 だから、いわば市街で銃撃戦をやっているようなものであり、その部位の皮膚は赤
 く腫れて痒(かゆ)くなり、大小の水疱ができたり、汁が出てきたりします。痒さが激し
 いと夜も眠れず、放っておくと2〜3週間して、ようやくおさまることもあります。

   このような拒絶反応を遅延型アレルギー反応といい、これによる皮膚の炎症をア
 レルギー性接触皮膚炎といいます。植物が人体や動物にトラブルをおこす化学物質
 をもっていることは、別の角度から見ると、植物が自分に害をなすものに対して、損
 害を与えることで、我が身を守ろうとする防衛のためだとも解釈されています。
   
植物による皮膚炎の特徴と対策
    
   いろいろな植物でアレルギー性接触皮膚炎が生じます。その場合一番目立つ特
 徴は、赤く痒い皮膚炎が、しばしば「線の形」に生じることです。ひどいと広い範囲で
 赤く腫れ上がりますが、赤く痒い皮膚炎が筋の形にでたら、ウルシの仲間のアレル
 ギーが考えられます。

   また、指で触った皮膚にも炎症がおきるので、下着やソックスを引っ張り上げたり、
 目をこすったり、トイレのため外陰部に触れたところなどにもかなり強い皮膚炎を生
 じることがあります。それは、指についた超微量のアレルゲン(アレルギーをおこす
 化学物質のこと)でも、吸収されやすい柔らかい皮膚からは容易に侵入して拒絶反
 応を引き起こすからなのです。

   ウルシ以外の植物でもアレルギー反応が起こります。アロエ、イチョウの果肉、レ
 タス、タンポポ、レタス、サクラソウ(プリムラ・オプコニカ)などでも人によってはかぶ
 れが起こるようです。どの植物が原因となってかぶれが起きたのかを調べる方法が
 あります。皮膚科の専門医へ行くと、パッチテストという検査をします。これは植物の
 汁を1滴検査用の絆創膏につけて2日間背中に貼って、その結果を見るものです。
 思い当たる植物があったら、ビニール袋を手にかぶせて、その植物を少し採取し、
 皮膚科専門医を訪ねてみることをお勧めします。
ウルシによる接触皮膚炎とは?
 
   身近にあるウルシ属の植物には、三出複葉(3枚の小葉をもつ)ツル性植物のツ
 タウルシと、羽状複葉をもつ木のヤマウルシがあります。どちらも、切ると白い乳液
 が出ます。かぶれる成分はツタウルシの方が強く、過敏な人は木や岩をよじ登って
 いるツタウルシに近づくだけでかぶれます。
   ウルシの乳液は漆塗りの箸、お椀、高級工芸品としても使われています。かぶれ
 は樹液(成分はウルシオール)が皮膚に付くことでおこります。漆器などの工芸品で
 も漆を塗って2年以内のものではかぶれることがあるようです。

出たばかりのツタウルシには光沢があります。
つる性で3枚の小葉をもつ三出複葉が特徴。
木に登ったツタウルシ、三出複葉である
ことが見極めるポイント。