季節の話題(その8) |
● 紅葉と落葉のメカニズム●
秋は植物が冬を迎える準備をる季節です。 あるものは種子を残し、 またあるものは根を残して枯れてしまいます。 常緑樹のように、ほとんど姿を変えないものもあります。 落葉樹は紅葉(黄葉)して、 山に華やかさをもたらします。 |
紅葉や黄葉はどのようにしておこるのか? | ||||
1 紅葉のしくみ 紅葉は葉の中のクロロフィル(葉緑素)成分が分解され、あらたにアントシアン とよばれる赤い色素を生成するためにおこります。アントシアンの生成は植物の 種類や品種によって、遺伝的にかなり決まった性質をもっています。そのほか、 光線の強さ、温度などの周囲の条件によってもかなり左右されます。また、葉柄 と枝との間に離層とよばれるコルク化した細胞の層ができ、この層は養分や水 を通さないため、葉で作られた糖類やアミノ酸類が葉にたまりすぎるようになり ます。そうするとアントシアンの生成が促進され、葉が赤みを帯びてくるようにな ります。植物の種類ごとに紅葉の色が異なるのは、この紅色系色素と共存して いるクロロフィルや黄色、褐色の色素成分の量的な差によるものです。 2 黄葉のしくみ 黄葉は黄色の色素であるカロチノイドによるものですが、この色素は早春の 若葉の頃から、すでに葉の中で生成されています。春から夏にかけては、活動 の盛んなクロロフィルの緑色におおいかくされているため目立つことがないので すが、晩秋、クロロフィルが分解して移動すると、代わって葉の表面に現れてき て、人の目に見えるようになるんです。 3 褐葉のしくみ もみじの中には黄褐色や赤褐色など、褐色系に変わるものもあります。黄褐 色の葉はタンニン性の物質(おもにカテコール系タンニンやクロロゲン酸など) や、それと複雑に酸化重合したフロバフェンと総称される褐色物質が蓄積する ためです。黄葉や褐葉の色素成分は、量の多少はあるがいずれも紅葉する葉 にも含まれており、紅葉の色調変化の原因ともなっています。 |
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美しく紅葉する条件とは? | ||||
木の種類によって紅葉するか黄葉するかは、その木の本来の性質から分け ることができます。しかし、例年、紅葉または黄葉する種類でも、その年の気候 により色に異変を起こすことがあります。翌年はまた本来の色に戻ったりする ことから、この現象はあくまでその年の気候による一時的なものと考えられるよ うです。では、具体的にどのような外的な条件が紅葉や黄葉の良否に関係して いるんでしょうか。 1 気温の低下と乾燥 秋冷えのころになると、日中の温度はやや高いが、夜間は急に冷え込みが 強くなる日が多くなります。そして、降雨が少なく、大気が乾燥し、地中の水分 が減少するような日が続くと、最良の条件となり、美しく紅葉します。 逆に、秋になって降雨が多く、大気の湿度が増して、晴天の少ない年は紅葉 の美しさが劣ります。 2 直射日光の強さ 日照りが続き太陽光線をたっぷりと浴びると、美しく紅葉します。散光や曇り の日の射光程度では日照不足で、紅葉はよくありません。谷あいや林内の木や 北斜面の木などは日射が不足しがちなので、たとえ1の条件が満たされていて も紅葉はよくないようです。 3 遺伝的な要素 毎年美しく紅葉する木から取った枝を、挿し木、接ぎ木あるいは実生し、それ により繁殖した子孫は、その大部分がまた美しく紅葉します。これは、樹木に含 まれている成分などによるものと思われますが、明らかに体質遺伝すると思わ れる事例は多いのは確かなようです。 |
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どんな樹木で紅葉・黄葉がおこるのか? | ||||
(紅葉するもの) ○カエデ科・・・ヤマモミジ、ハウチワカエデ ○ニシキギ科・・・ニシキギ、ツリバナ ○ウルシ科・・・ツタウルシ、ヤマウルシ、ヌルデ ○ツツジ科・・・ヤマツツジ、レンゲツツジ、ドウダンツツジ ○ブドウ科・・・ツタ、ヤマブドウ ○バラ科・・・ヤマザクラ、ウワミズザクラ、カリン、ナナカマド、 ○スイカズラ科・・・ミヤマガマズミ、カンボク ○ウコギ科・・・タラノキ ○ミズキ科・・・ミズキ (黄葉するもの) ○イチョウ科・・・イチョウ ○カバノキ科・・・シラカンバ ○ヤナギ科・・・ヤナギ類、ポプラ類、ドロノキ ○ニレ科・・・ハルニレ ○カエデ科・・・イタヤカエデ ○ニシキギ科・・・ツルウメモドキ ○ユキノシタ科・・・ノリウツギ、ゴトウヅル (褐葉するもの) ○ブナ科・・・ブナ、ミズナラ、カシワ ○ニレ科・・・ケヤキ ○トチノキ科・・・トチノキ ○ズズカケノキ科・・・スズカケノキ
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落葉はどのようにしておこるのか? |
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植物はふつう、根から水分や養分を吸い上げ、茎を経て葉や花へ運び、体内 の水分を葉から蒸散させます。冬になると、根の活動はにぶりますが、その時期 にも葉がふつうに蒸散活動を続けると、樹木は衰弱してしまいます。それを防ぐ ために、木は自衛の方策を身につけています。 その一つが葉を落とすことなんです。秋も終わりになると、葉の養分のほとんど が茎のほうに移って、葉緑素もなくなります。一方、葉柄の基部に、離層ができて 水や養分が流れにくくなります。やがて水や養分を運んでいた管も通じなくなり、 葉柄は離層のところから離れ落ち、そのあとはコルク層で覆われます。 |