季節の話題(その1)

 

● 植物はどうやって冬を乗り切るのか ●

小樽は積雪が多い地方で、森から雪が完全に姿を消すのは

毎年、4月も半ばをすぎてからのことです。

その間、

春を待つ植物たちはどうしているのでしょうか。


落葉樹の場合は?
 
   落葉樹は冬になると葉を落として、一見枯れてしまったかのように見えます。
 これは葉からの蒸散を制限して寒さや乾燥に適応するという意義があります。
 葉を落とす前に、葉の付け根に離層という組織が形成されます。それによって
 物質の移動が妨げれ、葉が落ちます。葉が落ちた跡は葉痕とよばれ、植物の
 種類によってその形は様々です。その部分はコルク層で覆われています。
   また、落葉樹には冬芽というものがあります。これは落葉の前につくられ、冬
 を越えて春になってのびる芽で、新しい葉や花のもとになるものです。冬芽は
 寒さや氷雪に耐えるため芽鱗で包まれたり、樹脂や毛でおおわれたりしています。

     

オニグルミの冬芽と葉痕       トチノキの冬芽と葉痕
 
野草の場合は?
 
   雪の下でじっと春を待っている野草のほうはどうでしょうか。野草が冬を越す
 方法には次の3つのタイプがあります。
   1つは種子で越冬するタイプです。これは1年草といい、春になると種子が発芽
 して成長し、夏から秋までに開花、結実しその年のうちに枯死する植物です。
 ツユクサ、ブタクサ、イヌタデ、ツリフネソウなどがあります。
   2つ目は秋に発芽して、あまり大きくならないうちに冬を迎え、冬越しするタイプ
 です。これは越年草(2年草)といい、ロゼットという形の葉で冬を越し、春になると
 その状態から成長し、開花、結実し種子をつくって枯れる植物です。ヒメジョオン、
 ナズナ、オオマツヨイグサ、コウゾリナ、ヒメムカシヨモギなどがあります。ロゼット
 で越冬する植物は2年草だけではなく、セイヨウタンポポやノアザミなどの多年草
 もあります。
   3つ目は秋に茎や葉などの地上部は枯れてしまい、一見枯死したかに見えるも
 のの、土の中にちゃんと根や地下茎を残して冬を越すタイプです。これは多年草
 (宿根草)といい、野草にもっとも多い生活型です。フクジュソウ、カタクリ、シロツ
 メクサ、ススキ、イタドリ、ドクダミなどがそれです。

ロゼットとはどんなものか?
 
   芽生えてから茎が高く伸びないで、短縮した状態のまま多くの葉をつけると、根
 から直接、葉が放射状に出たように見えます。これをロゼットとよんでいます。この
 葉を根生葉といいますが、根から出ているのではなく、短い茎から出ていているこ
 とがわかります。ロゼットの中心には頂芽があります。
   ロゼットの語源はバラのRoseからきていて、まるで花びらが重なっているように
 葉が広がっています。地面にぴったりと貼り付くようにしているので、風の影響はあ
 まり受けませんし、光は十分に受けられます。したがって、春になってからまず種子
 から発芽しなければならない1年草に比べると、ずっと有利に成長できることになり
 ます。
   タンポポやオオバコはずっとロゼット型で生活し、花をつけるときだけ茎を立てます。
 ヒメジョオンやメマツヨイグサは、ある期間をロゼットで過ごし、その後普通の茎を立
 てて、葉や花をつけます。
   しかし、秋に発芽したヒメムカシヨモギは冬越えのため必ずロゼットをつくりますが、
 春に発芽したものはロゼットをつくらないで、最初から茎を伸ばして小さいながらも花
 をつけます。一方、熱帯地方に生えるヒメムカシヨモギの場合は、どの季節に発芽し
 たものであってもロゼットをつくらないということが知られています。つまり、ロゼットと
 いうのは環境に適応した生活型であるといえるわけです。

   

オオマチヨイグサ     ヘラオオバコ